マストドンを運営する

前章はマストドンの運用、技術的にマストドンを動かす、すなわちマストドンを用いる方法の話でした。 しかし、マストドンはコミュニティです。 コミュニティは技術だけでは動かすことはできません。

コミュニティは人々の営みで成り立っています。 この章では、コミュニティの運営に最も必要な、精神世界の話をします。 つまり概念であり世界観の話です。

コミュニティとは何か

コミュニティとは、沢山の人が集まり、コミュニケーションをする場です。 コミュニティには、一定のルールがあり、それ以上に強力な場を支配する空気のようなものがあります。 文化と言ってもいいかもしれません。 ルールは管理者によって作られますが、場の空気は実際のユーザにしか作れません。 場の空気こそがコミュニティだと言っていいでしょう。

ユーザとは何か

コミュニティには様々な人が集まり、各々が別の価値観を持ち、各自の利益に合うように行動します。 場の空気に馴染む人は定着し、馴染まない人は早々に去っていきます。 前述のように場の空気はユーザにしか作れないので、つまりコミュニティとユーザは卵と鶏の関係にあると言っていいでしょう。 ユーザが場の空気を作り、場の空気がユーザを作るのです。

時が流れるにつれ、ユーザひとりひとりの思惑が重なって、場の空気は少しづつ変化していきます。 しかしたまに、1人のユーザの何気ない一言から、ユニークな文化が爆誕することもあります。 これは突然変異のようなもので、コミュニティとはまるでひとつの生物のように進化していきます。

生物と同じように、コミュニティも結果的に必然といえる形に変化していきます。 たった数人の管理者では、この変化の大きな流れを変えることは基本的に不可能と考えたほうがいいでしょう。 管理者が方向性を強く決定できるのは、コミュニティ誕生の瞬間だけです。 ここを上手く最初の場の空気を作れば、必然の姿が理想に近づくでしょう。 これからインスタンス運営を始める人は、初動を失敗しないことに最大限注力しましょう。

問題を見つけるために

コミュニティは様々な人の集まりなので、必ず対人関係のトラブルが起きます。 これは絶対に避けられません。 トラブルを未然に防ぐ、早く発見する、正しく対処するために、 管理者は常にコミュニティに参加し続けることが重要です。 他の仕事なんかしている場合じゃありません。

常に、いつも、何時でも、いちユーザとしてコミュニティに参加し続けます。 ユーザが気軽に相談や報告できるよう、血の通った人間であり、対等な仲間であり、 協力的で思慮深く常に頼りになる存在でいつづけましょう。 そのような関係を構築できれば、ユーザもこちらのお願いにきちんと耳を傾けてくれます。

管理者が特別な存在にとして見られては、他のユーザと正常なコミュニケーションはできません。 おそらく近寄りがたい雲の上の存在になるか、ほとんどの場合は無能な下僕として扱われるでしょう。

覚悟するということ

マストドンに限らず、あらゆるシステムにおいて管理者というのは絶対権力者です。 いざと言う時に押せるどくさいスイッチを持っているのです。 コミュニティを運営する以上、必ずどこかのタイミングで、このどくさいスイッチを押さざるを得ない時が来ます。 どくさいスイッチを押すことも、押さないことも、そしてただ持っているだけでも、 常に覚悟があったほうが良いでしょう。

絶対に許さないこと、これをやったらBANという基準を明確に決めておきましょう。 警告の与え方や回数も決めておき、不公平のないようにします。 個人的に好きなユーザや嫌いなユーザがいるのは人間なのでしかたのないことですが、平等な処分をしなければなりません。 常に説明する必要はないですが、矛盾なく過去と整合性のある理屈をきちんと組み立てておくべきです。 管理者も人間なので、覚悟に絶対的な一貫性を持つことはやはり難しいでしょう。 重要な決定は複数人の合議制を取ったほうが良いと思います。 覚悟をすることで、いざという時に一貫した決断を、躊躇なく素早くすることが可能になります。

覚悟とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことです

運営の覚悟は、一貫した方向性を強く示し、変化の方向性に影響を与えます。 しかしこれは、通常の場の空気を変化させる力学とは違い、少なからず場の空気を破壊します。 コミュニティの一部を破壊してでも、それでも向かうべき正しい道を指し示すという、非常に強いメッセージなのです。

運営に向く素質

公平性、一貫性、決断力、寛容性、慈悲、独立性、冷酷さ、煽り耐性

つまり

  • つよいこころ

  • やっていくきもち

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